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2週間前に見た映画

はやいもので 3月ももうあと 1週間だね。毎日すっかり春の陽気だし。
と、いうことで、時間が経っちゃったけど、忘れないうちに 2週間程前に見た映画の感想文を書いとこうっかな。(*2週間前のできごと

実は今日、仕事帰りにもう 1本見てきたので、勢いで一気に 2本上げちゃおうと思ってまして、ちょうどどっちも“楽団”が主人公の作品だし、でも、それぞれまったくタイプが違ってて、だけど、どっちもエスニックな音楽と文化と歴史が根底にあるっていう、しかもすごく時代性と言うか、まさに現在の世界情勢を予測して制作されこの時期に公開されたんじゃないかとさえ思えてくる偶然の不思議とおもしろさを感じているので、それを書き留めておこうと思いまして。
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じゃ、まずはこちらからいってみましょう。

エジプトの警察音楽隊がイスラエルの田舎で迷子になっちゃった、たった一晩だけの実に普通なお話です。

あらすじはこれだけで説明できちゃうっていう、とってもシンプルな映画。

そうだなあ、たとえたら、俳句みたいな映画、って感じ?
『迷子の警察音楽隊/原題:BIKUR HATIMORET(The Band's Visit)』





警察や消防や軍隊の音楽隊のレベルの高さは誰もが認めるところだと思うし、団員はその演奏力はもちろん、意識や志が高い人たちの集まりだというイメージがあるよね。
確かに音楽家なんだけど、でも、その前に1人の警察官だったり消防士だったり軍人だったりするんだよなあと、もう何年か前に仕事でそんな楽団を仕込み、その演奏を舞台袖で聞きながらなんとなく思ったものだ。
と、同時に、やっぱり音楽を愛する音楽家たちなんだなあと、演奏や規律に誇りを持っているんだなと思わせる態度や佇まいや雰囲気も感じたりして、ま、あまり意味はない感想なんだけど、それ以来、彼らに接する度にそう感じるようになったんだよね。
そう、昨日のキャンプ座間の米陸軍軍楽隊のパレードもしかり。

セント・パトリックやケルトやアイルランドにはほとんど興味ない商店街をパレードするために彼らは軍人になったんじゃなかろうに。

だけど、彼らの背筋と音と一糸乱れぬ行進と顔つきは、その後ろからついてきた日本の高校生の鼓笛隊とは背鵜物学的に別の生き物だというほどに凛々しかった。
日本の高校生の鼓笛隊を単体で見たら、しっかり練習してきたバンドだって思うだろう。
でも、根本的な何かが違う。

軍人と学生なんだし、それが仕事か仕事じゃないか、そもそもそこんとこがまったく違うんだから、表れてくるものが違うのが当たり前なのは百も承知だよ。
でも、そんな表層的なことじゃない。

たぶん音楽に対する態度と姿勢なんだろうな。

ブラスバンドや担当楽器や演奏している楽曲やその作家に対する興味がどの程度のものか、もしくは、そういう頭で考える音楽じゃなく、単純に自分が好きな音楽があるかどうか、もっと言っちゃえば音楽が好きなのかどうか。
ちょっと理屈っぽいこと描いてるのも気付いてるんだけどね(笑)

え〜と、映画の話しをしましょうか(笑)

この映画に登場する楽団は、エジプトの警察音楽隊なんだけど、そうは言っても団員はわずか 8名の小楽団で、主にエジプトの伝統伝承音楽を演奏していてね、なんか、文化交流のための親善演奏会にイスラエルに招かれて空港に到着したはいいけど、そういう小さな楽団だからマネージャーやスタッフはなく本人達だけで来ちゃったわけ。

で、もう、いかにも不器用そうな団長と、決してチームワークがよさそうじゃない無愛想な団員たちは、案の定、目的地とは全然違う砂漠の中の田舎町に行っちゃう。
田舎って言っても、田んぼやジャングルの中の集落っていうんじゃなくて、砂漠の中なんだけど巨大な団地郡があって、おそらく工場か何かがあるのかな?人はいるけど、商店街とか現代的な娯楽施設はなんにもないっていう田舎町。
そこと目的地を結ぶ交通手段は日に数本のバスだけ。最終バスも行っちゃったあとだから、彼らはこの町で一晩過ごすしかない。
そして明日の朝早くにこの町を立ち、本来の目的地へ行って演奏しなきゃいけない。

そんななんにもない町で暮らす平凡で至って普通な摺れてない不器用な人たちと、まったくもって不器用が警察の制服を着てるだけの、これで音楽ができなきゃ一生うだつがあがらないに違いないような小楽団が、たった一晩だけの限られた時間の中でどんなストーリーを織りなすのか、見る前はとてもおもしろい設定だなあと思った。
いろんな問題を抱えた人たちが、このあり得ない出会いによって人生を変えたり、何かを掴むきっかけを得たり、一晩のうちにこんだけ事件って起こるものか?ってくらい次々と起こる出来事をみんなで解決したり、新しい何かが始まって行ったり...

普通はそういうのを想像するよね?

この映画はそんな簡単な映画じゃありませんでした。

もうね、見事なくらい、な〜んにも起こりませんし、な〜んも解決しません(笑)

いや、すべての登場人物の心の中で小さな何かが起こったり、起こりそうになったり、きっとこの先、何かが変わっていくかも?とか、そういう感じも見る側に任せてます。

もしかしたら、ああ、そう言えば、そんなこともあったっけね、と、ささやかな思い出の一つくらいに残るだけの出来事だったのかもしれません。

宗教や思想、複雑で不幸な歴史的背景とか、もしかしたら未来永劫交わる事のない価値観だとか、そういう自分たちの代ではどうしようもないことって、戦火や暴力や支配や蹂躙の中にいる人たちを除き、(例え限りなく戦地に近い場所にいるとしても)一般人として日常の中でそういうことに苦しんだり悩んだり痛んだり、それだけで毎日を過ごすなんてことはないと思うんだよね。どんなに酷い状況に置かれている人たちですら、それより今を生きる事に精一杯だったり、それ以上に、人ってそんなに弱っちくないんじゃないかなって、最近は思うんだよね。こんだけお互いに傷つけ合ってるのに滅亡しない種って、他にはあまりないと思うし。

エジプトとイスラエルの間にある歴史的背景と現在の関係については、公式サイトの「映画の背景」のページを参照してもらうとして、見る前はそこのところも何かしら問題提議や人間同士の結びつきみたいなものを描くのかな?と思ってたら、さにあらず(笑)
実に普通に、困ってる人と、それを手助けする人たちの関係なんですね、これが。

そもそも歩いて行ける範囲での、一夜限りの出来事で、片言の英語を共通語としてしかコミュニケートできない地味で普通の人ばかりが登場する映画に何か事件を起こさせたら火曜サスペンス劇場にしかならないしね(笑)

2週間前に見た映画_c0030705_022661.jpgでもね、なんにもないから甘酸っぱくて切なくて、実にチャーミングな映画なんですよ、これが。
見終わった時に、なんだろう、胸の中がす〜っとするんですよ。なんなんでしょあれは。

部屋の中とか、小さなベンチの上とか、そういう場所に登場人物が 2人だけで片言の英語で訥々と会話するシーンが大半だから余計に彼ら一人一人の心情や現状が伝わってきたのかな?いろんなことを想像できたしね。

特にこのスチルのシーンはとてもよかったです。

いつにも増してとりとめのない要点のない雑感なので、そろそろ締めます。

文化交流や親善親睦って、政治的取引や上辺の誤摩化しは論外で、在り方自体も決して大袈裟なもんじゃなく、国家レベルじゃなくて、むしろ民間レベルで少しずつ起こしていくもの、もしくは自然発生した何かから様々な形態で派生・発展していくのがいちばんいいと強く思うんです。
個対個であったとしても、代が替わるくらい長い時間がかかったとしても、そういうものをやっていく人、やっていきたい人が一人、また一人と増えて行けば、そして、みんなの心の中に小さな種火が残って伝わって行くといいなと思います。

そういう若い人たちが増えていくといいなって思うと同時に、僕らの世代や僕より上の世代でも、まだまだ新しい出会いや気付きがあるんだよっていうことも伝えていけたらいいなと、そんなことを思った春です(笑)

もう1本あげちゃうって書いたけど、テレビで F1が始まっちゃったし眠いから、もう 1本は明日にします(欠伸・笑)

と、いうことで、明日は『ヴィットリオ広場のオーケストラ』をおおくりします(予定)

by thin-p | 2008-03-24 00:33 | 映画