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時計屋じゃないよ、ウォッチメン

昔、名古屋にウォッチマンっていう時計屋(てか、ドンキの元祖みたいな)があったんだけど、そんな話をしたいわけじゃない。

昨日は火曜日に観たヤッターマンの感想を書いた。
今日は水曜日に観たウォッチメンの感想を書こう。
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以前、北野武監督作品の感想に、劇場の席に深く座ってスクリーンを見つめながら「このままいつまでもこの映画が終わらなきゃいいのに、って思った」って書いた事がある。

このウォッチメンもそういう映画だった。
ずっと物語の中に浸っていたかった。その先や、その裏側、その真実と真理と核心にもっともっと迫って行けるような気になっていたかった。

途中で何度か涙が出そうになった。
途中で得体の知れない怒りが湧いてきた。
途中で、ここには書けないようないろんなことを考え思い想った。

たぶん、僕はもういちど劇場へ行くだろう。
そして、たぶん僕はいずれ発売されるディレクターズカット・ヴァージョンの超エクステンデッドなDVDを手に入れるだろう。

しびれた。そして、いろんなもやもやがちょっとずつ晴れていく気がした。

誰にでも薦められる映画じゃない。
むしろ観る人を選ぶ作品だ。
僕はほとんど予備知識を持たずに、ただずっと、なんか妙に引っかかる映画だなあと思い続けてきて、ちょうどタイミングが合ったから見ただけ。
けど、その「妙に引っかかる」何かのお陰で、この感動を味わえたし、今までずっと内側で考えて来た世界や日本やアメリカに対する仮説、暴力や宗教や政治や哲学や思想に対する仮説が、当たらずとも遠からずということをはっきりさせられた。

世界中の映画ウォッチメンたちのレビューで最も多いこの映画を形容する言葉は「難解」。

その通り、難解な物語だ。

だから余計に世界中の映画ウォッチメンたちは、自分なりに納得しようと、あれこれ解読したり物語の背景を参照したりこじつけたりして、それを論理的にまとめてみたり、理論化したり、一般論に結びつけたり、そうしながら、どうにかそれぞれの着地点を作り出しているように思える。だから個としての感想や感動、あるいは理解できそうなことについての記述は少し自信なさげな印象も受けるが、ウォッチメンの世界観や背景、ストーリー、キャラクター設定などの情報を補完するには余あるので、そうしたウェブ上のテキストをいくつか読めば、この作品の性格や背景はある程度理解できるだろうから敢えてここには書かないが、もし、君がこの作品に少しでも興味を持てそうなら(そして、君がある程度分別のある大人であるならば)、まずは日本のあるべき姿と進むべき姿と現実に、アメリカの近代史と実態とその真の姿に興味と関心を持って、グーグルやウィキペディア程度の知識で構わないから、この世界のシステムを知った上で臨む事を強くお薦めする。
それができないなら見ない方がいい。

と、偉そうなことを書いたけど、たかが知れてる僕の知識でもこうして楽しめたのでご安心を。要するに、「難解」というアイマスクや耳栓をしてしまっては勿体ないから、わかんなくても理解しようとせずに映画の中にある得体の知れない渦に身を任せればいい。

この物語を書いたのはイギリス人でアナーキストのアラン・ムーア。
だからアメリカとアメリカ人とアメリカ人の頭の中と心の中と、そしてアメリカ政府を客観的にシニカルに描き出している。そこがとてもおもしろい。

映画化されたタイミングや世界観から、昨年の「The Dark Knight」と比較されたり、一緒に論評されたりしているようだけど、分かりやすさとか、ジョーカーを演じたヒース・レジャーの遺作になってしまった話題性からもそっちを基準にしている人が多いようだ。実際、これら2作品にはたくさんの共通点があり、もっと言っちゃえば、宗教観だとか、神はいるのか悪魔はどうだ?っていう問いや、人間の心の中とは、それは宇宙とどういう関係にあるのかっていう、そこまで繋がってるのだ(と僕は感じる)。
そんな2作品をこの時代に作り公開するアメリカってのは、まさに得体の知れない国だ。

僕は子どもの頃からアメリカに憧れて来た。
生活、文化、食べ物、ファッション、車、エンターテイメント、、、
大人になるちょっと手前ではビートの思想に影響もされたし、アメリカへの憧れをそのまま表現した片岡義男やわたせせいぞうに大きな影響を受けた(笑)
そんなアメリカにいつの頃からか大きな疑問と怒りも同時に抱くようになった。
だけど、マンハッタンの真ん中で日本人であるという理由で酔っぱらいに罵倒されようが、彼の国に関する様々な悪いニュースに呆れたり怒ったりもしながら、それでもアメリカへの憧れは消えやしない。

そんなアメリカが戦争で勝てた国は我が日本だけだと僕は思ってる。
僕の歴史認識はその程度のものなので反論はご容赦願う。
アメリカの正義なんかそんなものだし、そのアメリカに追従し寄りかかり、すりよってるふりを60年以上貫きながらも、腹の底で真っ赤な舌を出してるのが我が国なのだ。
そのお陰で僕らはこうして日々を過ごしているのだ。
その代償は、神や宗教や思想や政治や哲学を誰かと堂々と論じ合ったり理解し合える環境を根こそぎ奪われてしまったことだと僕は思ってる。
もっと言ってしまえば、魂を抜かれて価値観を覆させられたのだ。低い次元で言えば、どこの世界に自国の誇りであるはずの代表チームをわざわざ外国語でチーム・ジャパンなどと言う国があると言うのだ。かっこわるい。

この国のウォッチメンはどこにいるのだろう。
彼の国のウォッチメンは?
世界の、地球のウォッチメンは神なのか?てか、神っているのか?

ウォッチメンみたいな映画を肴にそういう話が(たとえオタクレベルだとしても)出来るアメリカには、悔しいがやっぱ憧れる。
そして、日本は未来永劫、あんなような作品は作り得ないと断言する。
その代わり、アメリカ人には(てか、日本人以外には)どう逆立ちしたってヤッターマンみたいな映画は作れないだろうな(笑)

とりあえず来週あたり、もう1回観に行こう。

あ、このエントリー、冒頭で時計屋がどうこう言ってますが、WATCHMENは見張り番の他に、時計係みたいな意味もあり、彼らの先代はMINUTEMEN(ミニッツメン)と名乗っていたり、映画の中では「世界終末時計」っていう、核戦争による地球滅亡までの残り時間を表示するでっかい時計が出て来たり、事件のキーマン、コメディアンが着けてたスマイル・バッヂに付着した血糊が、その週末時計の針と同じ角度だったり、あながち時計に掛けたボケはボケじゃなかったりするのだよ明智君。じゃ、さばら!

注:ウォッチメンはヒーローがたくさん登場する特撮映画ですが
  間違っても子どもに見せてはいけません。
  セックスシーンもあるし、暴力の描写がハンパないってのもあるんだけど
  それ以上に、子どもの夢をぜんぶ打ち砕く物語だからです。
  逆に、大人はみんな見た方がいいとさえ、実は内心思ったりもしてます。

by thin-p | 2009-04-17 00:22 | 映画