死に往くラジオ

c0030705_11405291.jpg

名古屋のFMラジオ局、RADIO-iが9月いっぱいで放送を終了し、会社は清算手続きにはいることになったというニュースを今朝の新聞で知った。
愛知国際放送株式会社(あいちこくさいほうそう)は、日本のFMラジオ局である。愛称はRADIO-i(レディオ・アイ)。MegaNet系 列。外国語放送局の一つ。英文名称はAichi International Broadcasting Co., Ltd。名古屋に本店を置く興和グ ループの一員であり、放送機器も興和製の物を使用している。
しかし、開局以来10年間にわたって赤字経 営が続き、2010 年3月期までの累積赤字が28億8400万円にも膨らんだことから、今後の黒字転 換は見込めないとして、2010年9 月30日限りで放送を終了し、会社は清算手続きに入ることになった。(引用:愛知国際放送@Wiki

沿革を見てみると、2000年4月1日 6:00開局で、これは日本の民放ラジオの中では99番目、FMでは全国51番目だそうだ。
それが放送免許を国に返納することになった、と。シティFMなどの小型局を除くと、放送局の廃止というのは日本では今回が始めてだそうだ。遂にその日が来たか。

余談だが、このRADIO-iに100%出資している親会社の興和は、薬品ではコルゲンやキャベジン、ウナといったTV-CMでよく見聞きする製品の製造販売をしていて、薬局の店頭でよく見かけるカエルのマスコットキャラクター、「おめえ、ヘソねえじゃねえか」でおなじみの(今の人は知らないと思うけど・笑)ケロちゃんのイメージも強く、一般的には薬品会社として知られているが、実は総合商社で、放送・映像機器の製造・販売も行っていて、それらは全国のNHK・民放のテレビ・ラジオ局で使われているそうだ。

RADIO-iで使われている機器も、もちろん興和製を使用しているらしい。(興和@Wiki

さて、外国語放送とは何か。
自国内に滞在する外国人向け、あるいは国外の自国民以外の人々を視聴者と想定したもので、ラジオジャパンやAFN、FENなどが有名だが、もう1つ放送法施行規則にいう外国語による放送を通じて国際交流に資する放送、というものもある。
これに則って開局・放送している放送事業者は、2004年1月現在、超短波放送(FM放送)に於いて下記の4社である。(引用:外国語放送@Wiki

     ・エフエムインターウェーブ (InterFM)
     ・愛知国際放送 (RADIO-i)
     ・関西インターメディア (FM COCOLO)
     ・九州国際エフエム (Love FM)

この4局が冒頭に記載した引用文中にあるMegaNetというネットワークに加盟している

MegaNetとは、
1999 年12月、愛知国際放送(RADIO-i)の開局発表と同時に発足したラジオネットワークである。現在、外国語放送局4社 が加盟している。
ネットワーク番組や特番のセールス、緊急時・災害時の放送協力などを通じて相互に補完・協力し、外国語FM放送の発展と媒体価値の向上を目指し、日 本における国際交流の発展に寄与すること、日本人と外国人相互の親睦と融和を図ることを目的としている。(引用:MegaNet@Wiki
というもので、そこには大義はある。

しかし、MegaNer加盟局はいずれも経営難で、すでにテレビ局やラジオ局の子会社になったり、JR西日本への事業譲渡交渉に入っていたりという状況であり、これでRADIO-iが無くなれば、おそらく消滅していくことだろう。

大義だけでどうにかなる時代ではないのだ。


開局当時のRADIO-iはおもしろかった。大人が楽しめる番組が多かった。
平日の午前中にいきなり Thin Lizzyがかかるラジオ番組が日本にも出来た!と喜んだものだ(笑)

最初の頃こそ、他のFM局の選曲や番組構成がどうしても我慢できずにいたところへの開局だったこともあって、普段は仕事場でも運転中も、大抵 RADIO-iを聞いていた。
国際放送ということで、所々に英語やポルトガル語、中国語、韓国語などでニュースや各種話題を放送する枠があり、聞いていると不思議なもので、なんとなく何の話しをしているのかわかる部分もあって、そうやって外国語に触れるのはおもしろかった。

ただ、開局当初から使われていたバイリンガルのDJたち(今はナビゲーターっての?、RADIO-iでは IJって言うそうだ)の質は(一部を除き)決して褒められたものではなく、日本人も外国人も、いずれもバイリンガルというだけで、声もあまりラジオ向けとは思えないし、なんと言っても基本的なトークのスキルが低くて、改編の度にそれらが顕著に悪化していった感は否めず、一言で言えば、だんだんダメになっていったように感じていた。

特にヘッドライン・ニュースやスポーツの結果速報、交通情報や天気予報といった、最もシンプルな原稿を噛まずに読める人がいなかったのが痛かった。はっきり言って、聞くに堪えないレベルなのに、人気IJとか言ってるのが余計に痛かった。老けた声や古い感性で最新の音楽や情報を紹介されてもちっともわくわくしないっていうことを作ってる連中は気付かないのだろうか。

紹介される音楽も(タイアップやパワープッシュは別として)あまりストックが多くないのか、ある程度のところまでいくと、また1曲目に戻る、みたいな、結局、どこに力を入れているのかわからないラジオになっていった。

ご存知のように僕はポッドキャストで番組を配信している。
最近は更新頻度が極めて低いので偉そうには言えないが、番組の構成の仕方も話題も音楽の使い方も選曲も、それらの紹介の仕方も雰囲気や演出もそこそこ自信を持っている。
だからこそ、昨今のFMラジオの在り方と ていたらくっぷりは目を覆いたくなるものがある。

だから最近は仕事場では(CDなどで純粋に音楽を楽しむのは別として)もっぱら iTunesでネットストリーミングのラジオを、車の中ではiPodに入れたポッドキャスト番組かAMラジオを聞いている。

FMが弱体化してく反面、AMは作り手や送り手がラジオの本質をもう1ど見つめ直して大事にしていこうと思って時代性をきちんと理解して取り込んでいけば、本来のラジオの在り方とおもしろさを取り戻していくように思う。
と、言うか、すでにそっちへ動き出していると思う。
なので、AMも、それに気付いてちゃんと舵を斬り直せた勝ち組と、ラジオはもうダメだと諦め、でも許認可事業だから潰れることはないだろうと高をくくって衰退する負け組がはっきりすると思う。

FMのAM化ということが少し前から言われている。
地方局ほどそういう傾向にある。
僕が20代の頃に制作に携わっていたFMラジオ番組は、その当時からAMノリだったので、あの局は先見性があったのかもしれないが(笑)それはあの時代のローカルだったから成り立っていたのであって、今はそんなものは誰も求めていない。FMラジオが昔のAMの深夜番組みたいなことやったってさぁ、ねぇ...って思う。
そうじゃなくて、黄金期のFMの深夜番組を現代に蘇らせることが出来たらいいのに、と思う。

“AMノリ”のおもしろさを履き違えてはダメだ。
実は今、僕らが理想とする“AMノリ”と“FMのカッコよさ”をミックスして、そこに“TVの楽しさ”を盛り込んだ21世紀型のメディアを考えている。
大風呂敷だと思われるかもしれないが、本気だ(笑)


少し前にここに書いたけど、日本の音楽がどんどんダメになっているのも、チャートがおかしなことになっているのも、FMラジオがダメになっているからだと思う。

FMラジオが絶滅すれば日本の音楽も道連れにされるとさえ思う。

あ、いや、逆にまともになるかもしれない。


トップに貼った写真は映画「アメリカン・グラフィティ」のスチルだ。
リチャード・ドレイファス演ずるカートが街で見かけた娼婦にどうしても音楽を届けたくて、カリスマDJのウルフマン・ジャック(本人役)のスタジオを訪たシーン。

カートは彼がただの局員だと思い、ウルフマンも自分が本人であることを名乗らずに、そのリクエストを本人に伝えると言って彼から預かる。

そして、夜が明けたら町を出て行くつもりの、でもまだ自分の進路と人生に迷っている高校を卒業したばかりのカートに、その“局員”はこう言う。

「もし彼ならこう言うだろう。『外の世界は素晴らしいぞ、さあ思いっきり突っ走れ。』ってな。」

“局員”に礼を言ってスタジオを出たカートが振り返ると、ブースの中で彼が“例の嗄れた声”でガナって曲を紹介している。
その曲はカートがリクエストしたプラターズの「オンリー・ユー」であり、その声は紛れもなく、ウルフマン・ジャックのものだった...

ラジオには、向こう側が見えない分、こちらの想像も無限大だった。
映画の中の“局員”は、実は海賊放送をしていて名を明かせなかったのだけれど、それよりも、ヒーローショーと同じく、若者の夢を壊さないために、想像力を邪魔しないように、自らカリスマ本人であることを名乗らなかったのだと僕は解釈している。
そして、彼は若者との“約束”を果たした。

ラジオには夢と力と魔法があった。


今日は朝から仕事場のラジオはRADIO-iにチューニングを合わせている。
さっきからボッサアレンジのいろんなヒット・チューンがノン・ストップで、トークも一切なしで流れてる。
ウェブサイトのタイムテーブルでこの番組の説明を見ると、こう書いてある。
ご家庭のミセスやスモール・オフィスのBGMとして快適な音楽空間をお届けするプログラム。

もはやラジオでもなんでもない。

[PR]

by thin-p | 2010-06-16 12:18 | Radio | Comments(4)

Commented by ひげフレディー at 2010-06-16 14:47 x
んーん 感慨深い‥‥というか 切ないですね。
僕らが10代の頃には まだラジオの世界に魔法が存在していました。
それがどんどん皮を引っ剥がされて 最後には骨まで抜かれて
「喋りと音楽がただ流れてるだけのメディア」になっていく様を
苦虫を噛む思いでずっと見守ってきましたので
心のどこかで「面白いもんを作れないヤツは去れ」とも思うんですが
じゃあ、面白いものさえ作ればすべてが上手く行くのか?
というと、なかなかそうも行かないご時世で‥‥。
嗚呼 それにしても寂しい。
Commented by thin-p at 2010-06-17 18:30
> ひげフレディーさん              

出演者や制作スタッフの大半は局側からの発表やお達しではなく、外部からニュースなどを伝え聞く形で廃止を知ったそうです。
本人たちのトークやブログなどを見聞きすると泣きそうになります。

企業が倒産する場合も大抵は会社側からではなく、取引先などからの問い合わせの電話で知ったりすることがありますが、それは社員ですから、一蓮托生だと観念することも覚悟をきめることもできようものですが、単発で出演するゲストなどとは違うレギュラー出演者という立場だと、やっぱりキツいですよね。

聴取者との接点は彼ら、彼女たちが担っているわけで、番組リスナーも辛いだろうし、本人はもっと辛いと思いますね。

番組が終了する、打ち切られるということはあっても、局が消滅するっていうのは、う〜ん、ショックだよなあ。

ひげフレディーさんもラジオを愛した人でしょうから、ね、今のラジオの姿は、やっぱ、辛いし寂しいですよね。

けど、ラジオが持ってた魔法は形は変わっちゃったけど、まだあると思うんです。それをなんとか使えるようになりたい。
今、それを考えてます。
Commented by 茶? at 2010-06-18 00:15 x
ラジオに限らずマスメディアのマスを大衆と考えると
その大衆が不在、あるいは見えなくなっているのが今の
メディアだと思います。
経済不況からスポンサーの問題もあるでしょうね
スポンサーが一社だとより企業イメージの強いものになりがち
だし、他にも今の仮面ライダーを作っているのは番組製作者か
おもちゃ会社か、イケ面好きのヤングママなのかわかんない
ですよね。ん~言いたい事がうまくいえないな~
 thin-pさんからはラジオに関するいろいろな映画や音楽を紹介
していただきましたが、「Little DJ~小さな恋の物語~」という
邦画をご覧になりましたか?70年代、ラジオがティーンにとって
大きな可能性を差し示してた時が舞台なだけにとてもいい映画
ですよ^^
Commented by thin-p at 2010-06-18 23:51
> 茶?ちゃん(笑)@お待たせ〜

やぁ、どうもどうも/

たとえは悪くて不謹慎だけど、相撲協会がどうにもならないところまで来ちゃったのと同じような、マスメディアのあらゆる部門すべてに構造的な問題がたくさん内在していると思うんですよ。

今までは突かれなかったし、狡猾な輩がうまいことやってたと思うだけど、時代も変わっちゃって、代も変わって要領の悪いヤツがうまく立ち回れなくなったりして、あれもこれもバレちゃったり、膿みが出て来ちゃったり、みたいな。

もう10年以上前から言い続けてるけど、まさに「大差の時代」なんですよ。

すごく良質・良好か劣悪・不調かのどっちか、っていう。

全部が全部ダメなわけじゃないし、思想や理想を高く持っている人もいるから悲観はしてないけど、一生懸命やってる人が報われない時代でもあるという、そこのところはほんとうに心が痛みますね。いや、ほんとに。

さて、Little DJ、3年くらい前に劇場で予告編を見た時からずっと見たいと思ってて、まだ見れてないんだよね。
僕は予告編の時点で泣きました(笑)
こんど借りてきて見ます!思い出させてくれてどうもありがとう//