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天ぷら屋で瓶ビール、のちラーメン

年の離れた弟、みたいなヤツに昨年末息子が生まれた。

春の少し前の頃にずっといっしょにストーリーを練り、あの奇跡の夏にずっといっしょに映画を撮り、秋の入口の頃にはほぼ徹夜しながらいっしょにその編集作業をして作品として完成させた、あいつに、だ。

出会ってから10年近くなる彼との年齢差で言えば息子だとしてもあり得るが、こちらの気持ち的には弟的な存在なので、彼に息子を孫だとは思わない(笑)

そんな彼と久しぶりに会っていっしょにメシを食った。
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行きつけの天ぷら屋のカウンターで季節の天ぷらや料理を瓶ビールで楽しみ、自分たちで撮った映画にまつわるエピソードや生まれたばかりの彼の息子と、それによって変化した様々なことを話したり聞いたり、楽しい時間だった。
この天ぷら屋はほんとに美味い。

僕が彼くらいの年の頃、世はまさにバブル全盛期で、得意先や取引先との接待会食だったり、打合せや会議の後の「じゃ、食事行きますか」というのが慣例だったりして、あと本支社の社長や幹部などの来名のもてなしの機会も多々あり、仕事上の会食や接待は大抵繁華街の割烹や、老舗の料理屋とかホテルのレストランなどが多く、名古屋の有名店での飲食はある程度経験したが、僕の本分は学生時代とミュージシャン時代の貧乏生活の頃に培った勘と足で安くて美味い店を探し出し、それを気の置けない人たちとシェアすることなので、経済的に多少のゆとりができた後もプライベートではそういうガイドブック等に載っていないけど、実はめちゃめちゃ美味いとか、笑っちゃうくらい安いとか、店の人とか店の構えとかシステムとかがなんかいろいろおもしろいとか、そういう店を探すのを半ば趣味のようにしてきた。

あの頃、中高年になったらこじんまりとした寿司屋とか小料理屋とかのカウンターで熱燗徳利の首を人差し指と親指でつまんだり、瓶ビールで小ぶりのグラスに注いだりしながら、美味いものを少しずつたくさん食べる、みたいになりたいと思っていた。
ただ、あの頃の僕はほとんど酒が飲めなかった。
だから付き合いや接待の時は覚悟して、相手に気を遣わせないよう上手に振る舞いながら何度もトイレへ通って時には一晩中付き合ったりもしていた。

なのに、なぜか酒が飲めるようになっている自分をいつも想像しながら、いつもそれを楽しみに、と言うか、大袈裟に言えば、そんな自分を夢見て修行だと思って毎晩のようにぐったりしていた(笑)

雨が降る、少しだけ寒さが和らいだ夜に、息子が生まれたばかりの年の離れた弟みたいなやつと、天ぷら屋のカウンターで瓶ビール。
あの頃思い描いていた理想に近づいた、と悦に入った。

そのあと、路地裏の中華料理屋でいっしょにラーメンを食った。

「こういう店の五目中華がいちばん美味しいですよね」と彼。

いつの間にか感化されている(笑)

*使用した画像は鍬形恵斎「近世職人尽絵巻」(東京国立博物館蔵)から、江戸時代の天ぷら屋台の画
  東京屋形船案内のサイト浮世絵に見る屋形船のページより拝借

by thin-p | 2012-01-21 13:06 | 食道楽