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All The Young Dudes! Carry The News!!

昨夜、映画「The ballad of MOTT THE HOOPLE」を観た。
思えば今年初めての劇場鑑賞になる。わー!ぜんぜん見てねー!
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邦題は「すべての若き野郎ども モット・ザ・フープル」、彼らの大ヒット曲にして代表曲である「All the Young Dudes」の邦題をそのまま冠してある。
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 *すべての若き野郎ども モット・ザ・フープル 公式サイト(日本語)

1968年〜1974年にイギリスを中心にアメリカや日本でも大ヒットを飛ばしたロックバンド「MOTT THE HOOPLE」のドキュメンタリー映画だ。

僕が彼らを知ったのは小学校5年か6年の時で、当時は毎週日曜日に文化放送から静岡放送を経て放送されてた洋楽カウントダウン番組「オールジャパン・ポップ20(トゥエンティ)」を来て寝ないと月曜日が来ないというくらい、治らない麻疹にかかったようにラジオと洋楽に熱を上げていた頃。
(この番組のメインパーソナリティはみのもんただった)

72年発表の「All The Young Dedes」、翌年の「All The Way From Memphis(邦題:メンフィスからの道)」をこの番組で聞き、ちょっと心にひっかかった。
子どもだったからそれほどグググっと惹かれるまでには至っていなかったが、でも、他の音楽とは違う何かを感じていた。
おもしろい響きのバンド名も印象に残った。

中学に進んですぐの頃に、静岡放送の土曜の夜のラジオ番組(シャナナ静岡だったか1400デンリクナイターだったか…)でかかった彼らの「The Golden Age Of Rock 'n' Roll(ロックンロール黄金時代)」で虜になった。

グラム・ロックという言葉なんか知らない頃、グラマラスは単にエロを連想し、ゴージャスって言葉なんか使ってるやつはマス・メディアにもいなかった時代に、やたらとキラビやかな、絢爛豪華な屈託の無い、それでいて重厚で骨太なロックは13歳だった僕の心臓の共鳴を呼び、そして土曜の夜に自室で絶叫した。
大袈裟や比喩ではなく、実際に絶叫して親がびっくりして飛んで来た(笑)

僕はその頃からロック・ミュージシャンになることを夢見はじめていた。
まわりのロック野郎どもはご他聞に漏れず、ツェッペリンだパープルだ、という感じだったが、正直、特にその2つにはあまり興味がなかった。
ポップでキャッチーな音楽が好きだったし、小学校の気学部でコントラバスを始めた時に顧問から聞かされたジャズや黒人音楽や(メジャーどころではない)クラシックの影響で、そういう素地も多少はあったので、それらが入り交じって、今思えば結果的にファッション性やサブカル要素や時代性も盛り込んだモダンな音楽スタイルに惹かれていたのだと思う。
歌詞を理解したかったから英語もかなり本気で勉強していたし。

なので、MOTT THE HOOPLEや The Who、The Wings、後のパンク、ニュー・ウェイブ、ニュー・ロマンチックの方がピッタリくる音楽だった。
それは今も変わらない。

さて、そんなわけで、この映画が公開されると知って大興奮した。
と同時に、誰が見るんだ、こんな映画?とも思った(笑)

だって、いまの日本に彼らのファンがそれほどいるとは思えないし、かつてのファンは僕らの世代以上だろうから、いまも尚ファンであったとしても、この手の映画は、特に地方では時間的にも劇場的にも決してよい条件の上映にはならないと思ったから。(注:この映画をかけてくれた劇場をどうこう言う意味ではない。)

しかも、今おおきな話題になってる訳でもなく、仮になっていたとしても、ビートルズやストーンズやマイケル・ジャクソンなんかとは扱われ方も認知度も違うバンドのドキュメンタリー・フィルムを見たい人は実際それほどいないと思った。

と、まあ、そんなことは僕が心配することじゃない。

ってことで、名古屋での公開初日の昨日、今池の劇場、名古屋シネマテークのレイトショーで観てきた。

はっきり言うと、クライマックスもカタルシスもない、インタビューと当時の(決してクオリティの高くない)映像で構成された平坦な作りの、まさにバンドとそのファンのためだけの「モット・ザ・フープルの記録」という性格の作品なので、彼らと彼らの作品や当時の音楽シーンとか時代背景にまったく興味の無い人が見たら、えらく退屈な映画だと思う。
もっとも、そんな人はこの映画は最初っから見ないと思うけど、彼らの大ファンで、あの頃のイギリスの音楽シーンや世界のポップシーンがとても好きな僕が見てても、よくこんな映画をいまの日本で公開するなと思うくらい、取り立ててどうということのない作品だった。

バンドを知らない人にとって、のみならず、バンドや音楽に興味を持っている人にも、へたしたらファンにとっても、それほど貴重な作品ではないとさえ思った。

だけど、映画の最終章でバンド結成40周年を記念してロンドンのハマースミスでオリジナルメンバーによる再結成ライブが映し出された時、彼らとは次元も中身もまったく比べ物にならないことだけど、自分も高校時代にやってたバンドを昨年25年振りに再結成してライブをやって、その時に考えた様々なこと、感じたことがあれこれ心に浮かんで来て、そこでこの「All The Young Dudes」の歌詞を思い出して、エンドロールの最中と灯がついて席を立ち劇場の外へ歩き出す頃には、まさにタイトルが示す通り、すべての(音楽で食って行こうと思ってる)若き(バカ)野郎どもにはぜひ見て欲しいと思うようになっていた。

MOTT THE HOOPLEがいかに音楽に真剣だったか、ロックスターになったあとに訪れる想像を絶するプレッシャーとはどんなものか、大ヒットを飛ばしても尚、いつ転落するかという不安と隣り合わせでいることの恐怖とは、友情が壊れていく理由とは、ボタンの掛け違いやコミュニケーション不足が心に残すものとは、成功とは、挫折とは、絶望とは、希望とは、大人になることとは...。


昨日は午後から名古屋の繁華街、栄の南エリアで開催されている「栄ミナミ音楽祭」のステージをいくつか見聞きした。
いろんなジャンルの音楽を少しずつ見聞きした。

テレビ塔の近くでは大学の音楽サークルの演奏会や別のイベントでの音楽ライブもあったり、どこにも属さないストリートライブがあったり、それらも少しずつ見聞きしながら街を歩いた。

やってる方も見てる方も適当なのが多いなと思った。
本気で音楽やってるやつばかりが出てる訳じゃない。
ほんとうに音楽が好きで集まってる連中ばかりじゃない。
音楽とは呼べないようなものもあった。
メジャーなアーティストのステージも少し見たが、型通り。
全部が全部そんなのばっかってことじゃない。ただ、そういうのが多いってこと。
ま、フェスだし、まつりだし、イベントだからそれでもいい。

ただ、All The Young Dudes! Carry The News!!
すべての若き野郎どもよ、ニュースを伝えてくれ。


1992年にクイーンのフレディ・マーキュリーを追悼するコンサートで演奏された「All The Young Dudes」。
クイーンのメンバー3人(ブライアン/ロジャー/ジョン)とデヴィッド・ボウイ、ボウイの右腕から後にMOTT The Hoopleに加入したミック・ロンソン、そしてコーラスにはデフ・レパードのジョー・エイリオットとフィル・コリンを従えて歌うイアン・ハンターがかっこいい。

余談だが、このライブは全編通してもう何度も見ているが、いちばん感心するのはクイーンの演奏能力がずば抜けて高いことだ。
技術はもちろん、いろんなスタイルの音楽をソツなくこなし、かつクイーンの音にしてしまっている。
いわゆるセッション・ミュージシャンがこうしたオムニバス・ライブ・イベントの基本的な演奏を担当していろんなジャンルや形態の音楽に対応するのは、まぁ、出来て当たり前であると同時に、音楽的にはちっとも面白くない演奏になるんだけど、このライブはほんとにすごいと思う。
機会があればぜひご覧いただきたい。

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All The Young Dudes, Carry The News~ は 若者讃歌ではない。
ボウイ本人によれば、アルバム「Ziggy Stardust」の「Five Years」で歌っている「あと5年で地球が滅びる」というニュースを、おまえら世界中に知らせろよ!ということらしいというのを誰かのページで読んだ事がある。

それはともかくとして、こんな風に歌詞を分解したり研究したり哲学したりするのをおもしろがる若いヤツはいまもいるのかな。
いるといいな。

こんな風に探求したり想像したり哲学できる歌詞は、少なくとも日本のメジャーシーンでは絶滅してしまった。
トキみたいに、外国からもらって種を再生するしかないのかな。

と、そんなこともついでに考えさせられた映画だった。

 **すべての若き野郎ども モット・ザ・フープル 公式サイト
 *名古屋シネマテーク

by thin-p | 2012-05-13 13:44 | 映画