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だから女にはアタマが上がらない

先月末と今月のあたまに映画を1本ずつ見たので、ちょっと間が空いちゃいましたが、感想を記しておきまさや。
おきまさやって、そんな半端にボケても誰もわからんちゅうねん、な。
と、適当な戯言を書きながら、書き出しを探ってます(笑)
だから女にはアタマが上がらない_c0030705_23151474.jpg

えーと、先月見たのが「母の人生、っていうか、女の一生」みたいな物語で、今月に入ってから見たのが、「この星と共に生きる」っていう、地球が主人公の作品だったので、今年の映画鑑賞スタートは2つ並べて「母なる地球」という、こじつけテーマで見事に幕を明けました。いえーい(笑)

それじゃ、まずは先月みたこの作品からいきます。

   「やわらかい手(原題:Irina Palm)」




イギリスを中心に、フランス、ベルギー、ドイツ、ルクセンブルグといったEU5カ国が製作に参加した作品だそうで、どうも僕はもろフランス映画っていうの以外の(かなり広い範囲の)ヨーロッパ映画がしっくりくるということを最近気づきまして、これも実に心地よく楽しめましたよ、ええ。

だから女にはアタマが上がらない_c0030705_23163288.jpg物語のあらすじは、難病に冒され、大金を投じての海外での治療を受けない限り命の保障がされない少年を救うべく、少年のお婆ちゃんが短期間で高収入を得るために風俗店へ飛び込み、思わぬことから“No.1風俗嬢”になって、ロンドンの腑抜けた男たちを癒し、少年の親である自分の息子と嫁を癒し、風俗店のオーナーを癒し、過去の自分に決別して人生をリセットして自分自身の手で新しい人生を切り開いていくという、よくある話です。ってねえよ。ってあるよ。どっちやねん、って、設定が突飛で極端でロマンチックなだけで、この物語の本質的なことっていうのは現実の世の中にはよくあることだと思うんですよ。それが人生、みたいな感じで。
画(え)の明度も質感も暗くざらざらしてたり、音楽や効果音も耳障りで重く、舞台設定と相まって、ダメな人にはダメな映画だと思いますが、僕は不思議と心地よく馴染んじゃいました。
なんでだろ?って、あれから何度も自分の胸に聞いてたら、ようやくなんとなくわかってきました。

唐突ですが、恥ずかしげも無く言わせてもらうと、僕はマザコンでファザコンでフェミニストだと思うんです。
そして、結構根暗なところがあると思うんです。すぐにくよくよするし、後ろや下ばっか見てる時があるんですね、これが。
最近は多少はマシになったと自分では思ってるんだけど、でも、根っこの部分は変わってないと思います。

最近、お袋のことをよく考えます。お袋は立ち止まることをしない人です。切り替えが早い人でもあります。けど、辛いことや悲しいことを忘れ去るんじゃなく、むしろいろんな細かいことまでよく覚えていて、言い換えると根に持つところもあり、特に悔しかったことは絶対に覚えてて、それを反動や励みにしてがんばったりできる人です。基本的に明るいし。あ、変なとこに拘ったりもする頑固なとこもあります、ってか、相当な頑固者(笑)

この映画を見ながら、僕は途中からウチのお袋が主人公のおばあちゃんにオーバーラップしちゃって、なんか、いろんなことがフラッシュバックしちゃって、短い時間だったけど、う~ん、どう表現していいかわからないけど、満ち足りたっていうのでも、癒されたっていうのでもなく、「女の人生」を心から尊敬し祝福したいっていう、充実に似た気分になれたのでした。最後なんか爽快感すらあったもん。
物語やシーンそのものの意味じゃなく、テーマとして僕なりにすごくハッピーに捉えることができたんですよ。
同時に、やっぱ男ってのは弱っちいけど虚勢を張らなきゃやってけない生き物だと、そして女にはアタマが上がらないやって素直に思えたのでした。
「女の人生」を大いに尊敬しました。

女の人生。  演歌みたいだけど、演歌なんですよ、この映画は。

こういうテーマでこういうテイストの映画を日本やアジアで作ると、なんとなく非衛生的でちょっと救いの無い画になっちゃうのは、僕らがアジア人だからそう感じるだけで、欧米人から見たらそうでもないのかな?、どうなのかな?、っていうことを以前からよく考えるんだけど、どうなんでしょう?
以前はそういうデカダンな雰囲気の邦画、そう、昔のATGとかピンク映画って苦手だったんだけど、最近はそうでもなくなってきたんですよ。
ちゅっても、汚いものをただ汚く撮ってるような画とか、「これが芸術だ」って言い切っちゃってるような作品は軽蔑さえしちゃうけど、でも、なんて言うか猥雑さとか人間の本質だとか現実を恐れなくなったのかもしれないな、なんてことを思ったり。演歌もまた然り。

あ、やっぱ日本でこういう映画を撮ると浪花節とか情念みたいなものが前面に出過ぎちゃって重くなっちゃかもね。
それと、やっぱ、グッド・センス・オブ・ユーモアがあるかないか、そこがいちばんポイントかな。

と、中身の無い話を際限なく続けるのは得意ですが、そろそろ次の作品に移りたいので締めます(笑)

最後に、
相手を尊敬すれば自分の態度や立場が決まるのです。

この映画の主人公は、3人の男を救います。
そのシーンは、芝居も演出もセリフも決して大げさじゃありません。
だからこそなのかもしれないけど、僕はものすごく感動したし、彼女から勇気をもらいました。

「やわらかい手」
これ、見終わった今、あらためてよい邦題だと思います。
やわらかい(母の)手、それは、実はとても大きく強く、安らぎを与えてくれる手。
Palm は 手のひら。すべてを優しくつつんでくれるやわらかい手のひら。

母の人生を思う機会を与えてもらいました。

いい映画だったなあ。


ここ数年、毎年1本目に見る映画に僕は人生を教えてもらっています。

あ、あと1つだけ。

どんな状況でも、どんな環境でも、少しでも楽しめるよう、前向きになれるよう工夫して、どんなことにも一生懸命に心を込めれば、喜んでくれる人がいて、雄弁じゃなくても素直でシンプルな言葉でも表に出せば、ちゃんと気持ちが相手に伝わるものだということを、そして、そこから何かが動き出すということを、主人公は“身を挺して”教えてくれます。

by thin-p | 2008-02-15 23:18 | 映画